ここでふたつほど、僕にとって運命的なエピソードを書きます。メンバーからは都市伝説と言われますが、事実です。

ひとつめ。2006年の4月末、僕は自分が所属していたSMA麻生制作部の上長、麻生さんからこう言われました。｢周平、周平が気に入ったバンドならなんでもいいから、新しいアーティストを見つけてきてほしい｣。それまで東京スカパラダイスオーケストラ、かの香織、カーネーション、堂島孝平など、年令の上下に関係なく素晴らしい音楽家たちと仕事をしてきた自分にとって、まっさらな新人を見つけてくるということは初めての体験でした。麻生さんにそう言われてウレシかったし、意気に感じてもいたのですが、｢さて、どうしたものか｣とも思いました。バタバタと慌ただしいゴールデンウィークが明けて、5月アタマ。つきあいの行きがかり上で朝までのんでいた自分は、その日会社を午後おそめの出勤にさせてもらいました。

JRの始発駅、停車中のがらんとした黄色い電車に乗り込むと、目の前にエレキギターを抱えて携帯をいじっている男子。お、バンドマン。ルックスがいいコだな。どんな音楽をやっているのか……。電車が走り出します。髪型がゆるふわ茶髪だから、ヴィジュアル系のギタリストかな。空いている車内だったので、よっぽど名刺を渡して声をかけようかとも思ったのですが、こちらは二日酔い。というか、声をかけるまでもありません。ギターケースにもエフェクターボードにもペタペタとライヴハウスのバックステージパスが貼ってあります。そこに書いてあるバンド名はひとつだったので、当然自分のバンドのパスでしょう。新宿駅で降りていく彼を見送りながら、僕はその長ったらしいバンド名をなんとか記憶しました。

そのあとのことは当時の堂島孝平の現場マネージャーと担当ディレクターが知っていると思います。会社に着いた僕は、さっそく例のバンド名を検索しました。ホームページ発見。お、さっきの彼はボーカル＆ギターか。あれ？作詞作曲はベーシストが担当？試聴ページがあります。鳴り始める音楽。……スゴクいい……。僕はあまりの興奮に前述のふたりにこの話をしたくて、その夜またのみに行ってしまいました……。その被害者、当時徳間ジャパンのディレクターで現在は八十八ケ所巡礼の制作を担当している常石くんが2006年5月13日、吉祥寺Planet-Kへ。｢よかったですよ｣との報告を受けて、5月22日、下北沢Daisy Barで電撃的なショックを受ける。というのが僕とユニゾンとの出会いです。今でも思いますが、なんとなくアンテナを張っているときは、こんなことがたまにあるものです。

ふたつめ。2007年2月7日。僕はアポイントをとって、渋谷のトイズファクトリーの会議室にいました。ある案件でトイズさんにご相談があり、会社の代表番号にいきなり電話したところ対応してくださったのが平田さんでした。平田さんはMr.Childrenやケツメイシなどトイズを代表するアーティストを担当してきた方。もちろん初対面です。話が終わって、ふと思い出しました。｢平田さん、今すごくいいなと思っている新人バンドがあって、じつは今晩ライヴなんです｣。｢え、今日はその時間はスケジュール空いているから、ちょっとのぞきますよ｣。

そうして平田さんがご来場なさってくださったライヴが先ほど書いた、鈴木貴雄がガチガチに緊張していたZher the ZOOのステージでした。この日、僕も5社のレーベルの方々にお声をかけていたのですが、結果的にユニゾンはトイズファクトリーと契約し、平田さんが現在に至るまでレコーディングディレクターを担当してくださっています。これも運命的な話。川の流れのように、ナチュラルに導かれていくこともあるんですね。それはユニゾンが持っているなにかのチカラだとも思います。