「それでは「ハレノヴァ」恒例……ここ1年くらいで、いちばんたくさん楽しんだ(読者にオススメしたい)アーティスト、または作品をひとりずつ聞いていきます。音楽にかぎらず、小説や映画、マンガなど、アート全般でかまいません。4人4様、インタヴュー現場の空気感をお楽しみください。
- トミナガ
- ここ1年くらいで自分がいちばん心震えた、いろいろな人にオススメしたいアートを教えてください。
なんでもいいです。若者たちにオススメしたいアート。 - 渡辺大知(Vo)
- あ、若者たちに……。若者が。
- 宮田 岳(B)
- 僕、漆(うるし)にしようか、音楽にしようか迷ってるんですけど、どっちがおもしろいすか。
- トミナガ
- がっちゃん、いちばん最後にしようか(爆笑)。とりあえず、3人の出方を見てから、決めたら?
- ほかの3人
- (けっこう悩む)
- 大知
- (しばらく考えて)これ、けっこうむずいですね。なんか、逆に音楽じゃないのを言いたいな。
- 岡本啓佑(Dr)
- そうだなあ……。
- トミナガ
- がっちゃんはもう決まってるんだよね。じゃあ、がっちゃんから行こう。両方、言って。
- 宮田
- OKです。漆のほうはですね、黒田辰秋(くろだ・たつあき)という京都の漆芸家がいて、大正時代から昭和初期、1900年代の前期ですね、京都の名工として最終的には皇室の仕事とかもした人なんですけど、黒田辰秋の漆の作品は、絶対に見たほうがいいです。
- トミナガ
- へえ、どこで見れるの?
- 宮田
- ちょっと前まで横浜の「そごう」で展覧会をやってたんですけど、それは終わっちゃったんで、また次の展覧会で。
- トミナガ
- それは写真じゃなくて、やっぱり実物を見たほうがいい?
- 宮田
- 実物を見たほうがいいですね(断言)。
- トミナガ
- 俺たちまったく初心者なんで(笑)、なんかポイントを教えてもらっていいですか。
- 宮田
- 黒田辰秋さんは木工の作家で、机とか椅子とか箱とか作ってるんですけど、まったく古くないんですね。大正時代の人なのに。まだ既製品がない時代で、そういったモノは個人で作るか工房で作るかという時代に、そのなかでも京都でトップとされていた人で、もう圧倒的なんですよ、存在感が。
- トミナガ
- 生活用品ではあるの?
- 宮田
- 生活用品ではあります。あと、お茶の道具とか、箪笥とか、実用品ですね。……そういう精神をもっと今の若者、特に「ハレノヴァ」に出ているような人には持ってほしい(笑)。
- トミナガ
- ムリヤリだな(笑)。どういう精神?
- 宮田
- モノは初めからあるもんじゃない。机にしたって、なんにしたって、そういうモノは先人たちががんばって作ってきて、で、今のスタイルがあるという。そのいちばんカッコいいのが黒田辰秋の家具だと思うので、そこは一回触れてみてほしいですね。
- トミナガ
- モノを作る人の「オリジネイター」として、ということだよね。
- 宮田
- そうです。それがスタンダードになっていく。言ってみたら、細野晴臣ですよ(笑)。
- トミナガ
- ああ、なるほど……。わかりました(笑)。
※ちなみに細野さんはベーシストとしてだけでなく、宮田 岳のアイドルアーティストです。 - 澤 竜次(G)
- がっちゃんは「モノの大切さ」とか言ってるけど、すぐモノを捨てる「断捨離(だんしゃり)」です(笑)。
- トミナガ
- 今度、それ別のインタヴューでやるわ、がっちゃんのライフスタイルを紹介する企画で。ちなにその黒田辰秋さんの作品で、ひとつ特に好きなモノは?
- 宮田
- ぜひ見るべきや!ってヤツをひとつ挙げるとすると、黒澤明がコレクションしてたんですよ、黒田辰秋の家具を。
- 大知
- へえ。
- 宮田
- 黒澤明が別荘に置いてた「王様椅子」ってヤツがあるんですけど、こないだ実物を見たらもう……「王様椅子」です(笑)。
- トミナガ
- それは黒澤さん、自分の映画とかで使ったりしてないのかね。
- 宮田
- 使ってないです。完全にプライベートで。