- 大知
- じゃあ、ちょっとスミマセン。かいつまんで……。今年入ってからと思ったけど、今年入ってからはけっこうやるほうばっかりで、卒製(卒業製作)とかもあって……。
- トミナガ
- そうですよね。卒業製作で大知が監督で撮った映画で、僕も役者デビューしましたから。前日の深夜に電話がかかってきて、翌朝早朝集合で……。
- 大知
- でも、トミナガさんが2シーン出たうち、1シーンカットしちゃいました。
- トミナガ
- おい!(笑) ま、たいしたことやってないですけど……。
- 大知
- で、今年って思わずにここ1年で考えるといろいろあって、ロシアの映画監督のジガ・ヴェルトフっていう人がいて、ジガ・ヴェルトフの「カメラを持った男」っていう映画がこの1年のなかでは断トツに衝撃で。1920年代の作品なんですが……
- トミナガ
- あ、そんな昔の?
- 大知
- まだサイレントの時代で、今で言う「メタ視線」みたいな……映画のなかでカメラマンがいて、世界を切り取っている人を撮ってる映画みたいな、そういう「メタ視線」を100年くらい前に生み出していて、そのまんまカメラを持った男が街中をガーッと撮ってる映画なんですけど、今まで自分が好きだと思ってきた映画の原点がすべてその映画に集約されていることに気づいたりして……。映画の原点を見た気がします。さかのぼればもっと古い映画ってのはいっぱいあるけど、映画のなかで自分がなんでワクワクするかがそれを観てわかったというか……。光と影が映るっていうことがワクワクするんです。で、その「カメラを持った男」っていうのは、ただ走ってる車とか人とか街を撮ってるだけなんですけど、それこそ、なんか物を投げてる映像がスローモーションになったりするだけで大爆笑して。
- トミナガ
- 大爆笑できるの?(笑)
- 大知
- もちろん、もちろん。コメディーの原点でもあるし、音楽的にわかりやすく言うと、レッチリ(Red Hot Chili Peppers)の「Give It Away」のPVは、そのオマージュだったりするんですよ。
- 一同
- へえ。
- 大知
- たとえば、幅跳びしている人の足だけが画面の半分から出てきて、こっち側からちがう物が出てきたり、なんかこう、光と影が像になって動くだけで奇跡なのに、それがいろいろな仕掛けで映画というフレームのなかでさらに区切られたりとか、あとスローモーションや早送りを初めて採り入れた映画で……。ただ走っている人がアーッてゆっくりになるだけで笑っちゃうみたいな。非現実的なモノが観たいから映画館に行くと思うんですけど、街の人を撮ってるだけなのに、世界は変えられるというか。だって、ふだん見ている人じゃないですか。街で車を走らせて「楽しいね」とか言ってるのも、早送りにするだけですごくおもしろかったり、そういう切り取り方ですね。どんな映画だろうが、いろいろなモノの原点な気がします。逆に1920年代にあんな映画があって、今なにしてんねんって思う気もあるし、なんも進歩がないというか。
- トミナガ
- へえ。大知の自主映画がその後どういうことになってるか、非常に興味深いですね。めっちゃスローモーションになってたら、ヤだけどね(笑)。
- 澤
- もろに影響、受けとる(笑)。